議案第10号 令和5年度一般会計予算に対する反対討論

 

 R5年度予算の歳入・歳出予算は、前年度比0.8増の238億9000万円となり、歳入では地方交付税5億7千万円の13.3%増、財政調整期金1億2000万円 16.6%増によって、市債5億8千万円24.7%を減らすことができています。

 歳出では、新規事業として市民が待ち望んでいた「市民のくらしの足」となるデマンド交通運行事業をはじめ、交通安全対策では2箇所の信号機設置のための交差点改良の詳細設計、車道への矢羽根などの路面表示、脱炭素化の促進に9231万円の計上、子育て支援には出産・子育て応援給付金とともに、市独自の妊婦支援給付金の創設など1億6348万円の計上となり、市民にとって安心・安全の予算計上を評価するものです。

 

 一方で、新年度の重点施策のひとつに、国が促進するDXを位置づけています。個人番号法では、その利用範囲を社会保障・税・災害の3分野に限定することで、個人番号で検索管理される個人の情報を限定しています。この下に、住民サービスの向上と庁舎内での事務の効率化を図るために推進することは否定しません。

 しかし、国の成長戦略に則り,マイナンバーカード普及,自治体システム標準化によって市民の個人情報を大企業の儲けへとつなげるデジタル化推進は、市民のプライバシー侵害の拡大につながるものであり容認できません。

 政府は「マイナカードはデジタル社会のパスポート」だとして健康保険証・運転

免許証一体化など、国民がマイナンバ―カードを使わざるを得ない状況をつくりだし、マイナポイントの延長、申請書の再送付など普及策を構じています。マイナンバ―カードの取得は任意であるのにもかかわらず、自治体にたいしても取得率を引き上げるために、地方交付金の配分を普及率の上位1/3の市町村に割り増し配分をするなど、自治体間を競わせ、自治体が特定政策を推進せざるを得ない状況をつくりだしています。このようなやり方は、地方自治の侵害にもつながるものであり、政府のやり方に追随すべきではありません。

 

 新型コロナウイルス感染に続き、物価高騰による経済への影響が深刻化する中で,地域経済の活性化、市民の暮らし,福祉を支える施策を最優先の取り組みは切実です。

 八街市の経済の屋台骨である農林水産業費・商工費は予算総額のわずか2.2%で前年度比0.5%増にとどまっています。

 農林水産費では前年度比45.2%増となっていますが、北総中央用水土地改良事建

設負担金の償還金がR5年度より始まるものであり、農林水産費の35%を占めています。これを除いた新年度予算は前年度比で1100万円の減となっていますが、肥料・飼料・資材等高騰に苦しむ農家に、市独自の支援策を実施すべきです。

 農家戸数の減少する中で、基幹産業の農業をいかに守り・発展させていくのかが問われています。市の後期基本計画に掲げる「かせげる農業」への具体的な取り組みで、活気あるまちづくりを進めることを求めます。

 また、商工費は前年度比わずか365万円増です。八街商工会議所のR4 10月から12月の景気動向調査では、仕入れ単価の83%上昇とともに、採算については前年度同月比で57%が悪化していると回答しています。中小業者支援の継続化や市民負担軽減を図らなければ足元の経済が弱体化し、税収低下・財政悪化が懸念されます。

 さらに、10月からは、インボイス制度の導入が予定されていますが、個人事業主やフリーランスなど市内免税業者、シルバー人材センターの登録者はインボイス制度の影響を受け、さらなる負担が課せられることとなります。市民生活への負担となっている消費税を5%に引き下げることとともに、インボイス制度の中止を国に求めるべきです。

 

市財政運営の上で4点の改善を求めます。

 1点目に保育園の保育士確保には苦慮され、前年度に続き新年度も派遣会社に6929万3千円を支払い、7名を確保するとしていますが、人材紹介会社への手数料は、3割から4割といわれており、約2100万円から2800万円が経費に消えてることとなり、無駄な税金投入となっています。人材育成のための投資に使うべきです。

 これからの保育士確保にあたっては、資格を取るために進学する学生に奨学金をだし、卒業後は八街市内の保育園に勤めてもらうという条件で正規保育士の確保を計画的にすすめることを求めます。

 2点目には、駅前駐輪場の活用です。八街駅南口の第一駐輪場は約1500台にたいし利用率は23.4%にもかかわらず、自転車駐車場用地借り上げ料255万3千円を計上しています。年々利用台数は減ってきており、この間も提案してきていますが、現在の駐輪場の見直しとともに、八街駅送迎利用者の駐車場用地として土地利用を検討すべきです。

 3点目には、給食センターについてです。第一調理場・第二調理場の施設改修費はR5年度は3500万円の計上となり、毎年、老朽化対策に追われています。一方で、児童・生徒数は年々減少し、最も多い時の1/3の約3900人となっています。毎年150人ほどの減少となっており、二つの調理場は必要ありません。早急に経費削減のための取り組みを求めます。

 4点目に、市営住宅の入居促進し維持管理の問題です。

住宅使用料は前年度比約100万円の減の4929万円の計上で、入居率は前年度よりさらに下がり、67.8%となっています。空き室による家賃収入の損失とともに、希望する市民が入居できないのでは本来の役割は果たせていません。

 特に、市営住宅入居希望者への市民サービスの制限は、コロナ・物価高の下で、やむを得ない事情によって税を滞納している市民に追い打ちをかけるようなものです。税滞納者に対する市民サービス制限は直ちに撤回し、分納誓約書をもって入居を可能とすべきです。

 また、住宅困窮者が、入居決定から半年近くも待たなければ入居できないというのも問題です。住宅に困窮する市民に、低廉な住宅をいかに早く提供するかが問われています。市民の立場に立った取り組みが必要です。

 さらには、耐用年数が経過し老朽化が進んでいる朝陽住宅・交進住宅は、公営住宅法1条の「健康で文化的な生活、良好な住環境」からほど遠いものとなっています。災害時には危険が伴うことは明らかであり、日常生活でもドアや天戸・屋根の修理への声が上がっているのにも関わらず、居住者の切実な声を無視した管理運営となっています。修繕の予算確保とともに、入居対象外の空き家となっている住宅の撤去か急がれます。今後、高齢者人口が増加する中で、高齢者が安心して暮らせる住宅が必要であり早急な計画を求めます。

 

次に教育費・子育て支援についてです。 

 教育費の中で一番負担の重い給食費が、新年度から第3子のみ無償化となりますが、全児童・生徒の17%にとどまります。給食費は印旛郡市で一番安いとしていますが、給食費の滞納額は約6000万円と最も多くなっています。新年度の給食費事業収入のうち滞納分は約500万円の計上となっています。払い切れないという状況が読み取れます。物価高の中で子育てしやすい環境づくりが必要であることは明らかであり、計画的に全家庭を対象とした給食費の軽減施策が必要です。

 2点目には、教材備品等の整備計画と予算措置です。文科省は子どもたちの確かな学力の育成を図るとして、R2年度から11年度の10ヵ年を計画的な整備を促進するとしていますが、八街市の取り組みは、R2年度から小学校は153万9千円、中学校は133万7千円と同額であり、各学校に1学級分の教材備品購入費しか確保できていません。文科省は、R2年度から11年度まで学校教材整備のため単年度800億円の地方交付税措置が講じるとしており、これを活用して子どもたちの学びの保障をすべきです。

3点目には就学援助制度についてです。

子どもの貧困は7人に1人、母子家庭では2人に1人が貧困という状況の下で、市の就学援助費受給率は全国平均の半分にとどまっています。教育委員会は、判りやすいHPを開設していますが受給率の向上につながっていません。「申請のために仕事が休めない」 「就学援助を学校に申し出るのが恥ずかしい」など申請のしづらさが足かせとなっています。東京・世田谷区を始め多くの自治体がオンラインによる申請方法を導入しており、受給率の向上に努力をしています。本市でも早期の導入でより多くの子どもが支援か受けられるよう改善を求めます。

 4点目には、子育て支援として、中学生以上の居場所の問題です。R3年度に児童館が開設され、多くの子ども・市民から喜びの声とともに利用が高まっています。一方で、中学生・高校生の利用ができないという声もあります。元・北児童クラブの土地については、新年度も賃借の費用を計上していますが、未だ土地利用については具体化されていません。中学生・高校生の居場所づくりとしての活用を求めます。

 

 最後に税滞納市民への対応についてです。

納税は憲法に示された国民の義務であり、支払い能力があるのに払わない一部悪質な滞納者には厳しく対応を迫ることは必要ですが、何等かの事由で納税が滞ってしまうケースが多くあります。市税等の滞納に、分納誓約で支払をしてきた市民にたいし、突然の捜索をし、差し押さえる物件がなかったために、期日までにお金を借りて一括で払うことを求め、納められなければ「給料を差し押さえる」など差し押さえありきの強権的な取り立ての実態があります。市民の生活を壊してまで滞納整理をするのは本末転倒であり、このようなとりたては改善すべきです。

 また、子どもの教育・進学のために掛けている学資保険は「差押え禁止物件ではない」という理由からを差し押さえの対象としています。しかし、子どもたちの進路に重大な影響を与えるものであり、断じて認められません。

 新年度は、滞納者の財産をあらゆる手段で差し押さえるというやり方でなく、滞納者の生活を立て直しながら相談にあたる方向へ転換し、国税庁「税務運営方針」の「納税者に親切に接し、苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない」とする徴収業務に徹することを強く求めるものです。