議案第15号 令和3年度一般会計予算に対する反対討論

一昨年の台風・昨年からの新型コロナウイルス感染症への対応と職員のみなさんの懸命な取り組みに敬意を表します。

 

新年度は市財政逼迫の中、新規事業・拡充合わせて28事業の9億7千万円、総額2203000万円の当初予算となりましたが、コロナ渦で何より優先すべきは、新型コロナウイルスの感染防止の対策や市民生活が成り立つ経済対策が求められています。新年度予算のコロナ対策費は学校・保育園・幼稚園・庁舎等5900万円を計上していますが、感染抑止のためのPCR検査・保護・追跡の抜本的強化を市独自の施策として予算確保することが必要ではないでしょうか。

 

国民・市民生活が大変な中、政府の新年度の社会保障予算は自然増1300億円を削減し、介護報酬では0.7%引き上げるとしましたが、0.05%分は新型コロナウイルス対応分として21年9月末までの時限措置であり、度重なる報酬引き下げやコロナ危機による現場の疲弊を打開するには、程遠い水準です。

サービス利用では、低所得の施設入所者の食費・居住費を補助する「補足給付」について、8月から負担増を「実施する」としており、本市では、特養ホーム・ショートスティ利用者の64%が対象となり、入居費用の支払いに不安を抱える方が多数発生することは明かです。さらには年金給付が500億円削減です。コロナ渦のもとで、負担増は実施すべきではありません。

 

一方、コロナ危機に乗じて進めようとしているのが行政のデジタル化です。

菅政権はマイナンバーカードの全国民取得を「デジタル政府・デジタル社会」構築の大前提としています。2022年度末までに全国民に持たせることを方針に掲げ、213月から健康保険証との一体化を開始します。行政手続き、年金や公金の給付、学校教育での活用、各種免許や国家資格証など生活のあらゆる分野でマイナンバーカードを使ったデジタル化を進めようとしています。

国からの社会保障税番号制度関連事務費は56458千、前年度比392.4%増となっています。八街市のマイナンバ―交付率は、R3228日現在26.1%であり、新年度は700036%の交付目標としています。マイナンバーカードの利用を国民生活のさまざまな分野に拡大することにたいし、個人情報の集中や国家による一元管理の危険が指摘されています。国民が望んでいるわけではない全員取得を押し付けるべきではありません。「役所に行かずにあらゆる行政手続きができる」と利便性を強調しますが、デジタル機器を使いこなせない人は行政サービスから取り残される恐れがあります。

もともとマイナンバー制度は社会保障、税、災害分野において利用されることが目的としています。マイナンバーカードの全国民取得をコロナ危機の中で推進する道理も必要性もありません。根本的に是非を問い直すべき制度であり、国への意見をあげることを求めます。

 

今一つ、国の施策を押し付けているのが、霞ヶ浦導水事業です。この事業への出資金は新年度273万円です。

八街市も加入する印旛広域水道は、水余り・人口減少のもとで昨年4月、八ッ場ダムからの受水を開始。今後、霞ヶ浦導水からの受水も計画しています。しかし、霞ヶ浦導水は計画策定から35年が経過。未だ完成していません。工事が難航し2023年度に5回目の事業見直し、総事業費1900億円から2395億円に増額、工期を2030年度へ7年間延長しょうとしています。

この事業には、当初9団体が参加していましたが、9年前には千葉市と東総広域水道が「予定したほど人口が増えず、水源確保の必要性がなくなった」として離脱。今回の見直しでは、埼玉県水・九十九里地域水道が撤退を表明しており、5団体に減少。千葉県の水道で残っているのは印旛広域水道だけとなっています。

2017年度につくられた八街市水道事業ビジョンでは2019年の給水人口は予測値38800人。しかし、実際の給水人口は2019年で35835人となっており、予測値より3000人も少なくなっています。今後も、人口も水需要も減少が続きます。

八街市は、八街駅前区画整理事業・クリーンセンター建設では苦い経験があります。

駅前区画整理事業では、8億円で購入した土地が未だに活用が見いだせないまま塩漬

け状態となっています。さらには、10万人になると大幅な人口増を見込んで76億円で建設された大型クリーンセンターのこの間の修繕費は、約30億円が投入されてきており、来年度から3カ年かけて修繕する計画では31億円が費やされ、今後13年間には補修・維持管理費に63億円、平均すれば1年間に5億円の税金が投入される計画です。必要以上に大きな建設事業に未だに振り回され、甘い見積もりが、今も市財政を苦しめています。霞ヶ浦導水事業で、同じ徹を踏むべきではありません。

甘い見通のもとで必要のない水源確保に税金を投入することは、今後、市財政と市民への負担を増大させることになります。今やるべきは、印旛郡市広域で水余りをきちんと論議し、きっぱり撤退を表明することです。今ある県水の余剰水の活用、国・県に補助金を要求し、市民のいのちの水を低廉な価格で提供する取り組みを求めます。

 

新年度は、新たにオープンする児童館、リニューアルの老人福祉センター、南部老人憩いの家の3施設を指定管理者制度により管理するとしていますが、導入にあたって「施設間の交流事業の推進、経費削減を図る」とし、当初、経費節減は372千円との説明がありましたが、経費節減どころか老人福祉センター・南部いこいの家だけで1100万円の増となっています。

一方で、ファミリーサポートセンターの事業が委託から市直営により598万円減、敬老会事業の見直しにより、5116000円の減となるなど、委託の在り方を見直せば、経費の削減が可能であることもあきらかになりました。国がごり押しする指定管理者制度や委託の導入、各課事業の在り方、原価見積もり等改めて見直すことで経費削減への取り組みが必要です。

 

市内どこに住んでいても安心して暮らせるために、この間、デマンドタクシーへの切実な声があがってきましたが、新年度から始まる公共交通計画案でも、高齢者外出支援タクシーとしての位置づけは変わらず、改正はタクシー券の上限利用を2枚から4枚に。市外への利用は医療機関限定をはずすというものですが、まち中心部から離れた地域の市民にとっては改善につながっていません。今後、乗合タクシーではない公共交通の実証実験を計画期間内に実施するとしていますが、現在の高齢者外出支援タクシー導入時の実証実験が充分ではなかったことを踏まえ、早期の情報提供で市民とともに練り上げていくことを求めます。

 

耐用年数をこえ、老朽化が激しい市営住宅にたいし、笹引き団地の転居にむけた予算が計上されましたが、実住団地は建設から65年、榎戸62年、富士見61年、榎戸63年、笹引56年、交進53年 、朝陽49年が経過しており、環境改善は追い付かず、平成30年に作られた市公営住宅長寿命化計画は実態に合っていません。

公営住宅法1条で言う「健康で文化的な生活」、良好な住環境からほど遠く、計画の見直しを早急にすべきです。

 

コロナ禍で市民生活が圧迫されています。このような時だからこそ、大切にされる市政運営が求められます。特に税滞納市民への対応です。

1点目は、真に住宅に困窮する税滞納者への住宅入居拒否は改めるべきです。

国はこの間、「国税、地方税を滞納していないこと」を入居要件から削除するとともに、生活困窮者の住宅確保策として公営住宅の活用を可能としています。税滞納者の市営住宅への入居を一律排除することのないよう、入居要件を見直すべきです。 

2点目には、いのちに係わる国保の限度額認定書の発行の問題です。高額療養費の限度額適用認定は、国民健康保険法施行規則に基づき、保険料の滞納がないことを確認できた場合に限り行うものとされています。ただし、保険料の滞納があることについて、特別の事情があると認められる場合及び保険者が適当と認める場合は認定を行うものとされており、個別の事情を尊重し発行べきです。

税滞納者であっても、完納に向けてきちんと分納誓約を履行している市民の生活再建を支援していくことが行政に求められています。

3点目には、いまだに生活が成り立たなくなるような徴収強化の在り方を見直すことです。滞納者への差し押さえが増加し、給与・預貯金が約8割占めています。「滞納者の財産をあらゆる手段で差し押さえるというやり方でなく、滞納者の生活を立て直しながら相談にあたる方向へ転換し、「納税者に親切に接し、苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない」とする国税庁「税務運営方針」は、地方税の徴収業務にも当てはまるものであり、度重なる増税、格差と貧困の広がりの中で、「住民に信頼される税務行政の確立」を強く求めるものです。

 

最後に、次代を担う子どもたちの教育問題です。

R2年から千葉県子どもの読書活動推進計画第四次が始まっており、学校図書館の環境整備と読書活動の充実を図るとしています。子どもの読書環境を整え、学びをサポートする大切な役割を担っている図書館司書の配置については、地方交付税措置がされていますが、未だ改善されておらず、全校への計画的な配置を求めます。

また、発達障害の児童生徒に対し学習活動のサポートを行う特別支援教育支援員は、13人に1人配置されていますが、障害に応じた適切な教育を実施する上で人員増が求められます。

コロナ渦で一層明らかになってきた貧困問題にいかにとりくむかも問われています。

平成26年に成立した「子どもの貧困対策法」は、子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることのないよう、子ども達に対する教育の支援・生活の支援・就労の支援・経済的支援等の施策を推進のために、地方公共団体は当該地域の状況に応じた施策を策定することを求めています。具体的なとりくみについて新年度も見受けられません。就学援助費の受給率引き上げとともに、教育費の中で一番負担が大きい、給食費の無償化導入を計画的にすすめることを求めます。

 

また、新型コロナウイルス感染症拡大の中で、大学生、専門学校生が学び続けることが困難になっています。教育を受ける機会の均等をはかり、また貧困の連鎖を断ち切るためにも市独自の給付型奨学金制度を求め反対討論といたします。