議案第18号  令和2年度八街市一般会計予算 反対討論

新年度予算案は、昨年の度重なる台風被害の復旧・復興の最中、わが党が長年にわたり、地域のみなさんと一緒に要望してきた児童館建設・18才までの医療費無料化への予算が計上され、また、南中学校屋内運動場改修事業、就学援助費補助単価の見直し、老人福祉センターの改修、消防団員火災出動手当の見直しなど、思い切った予算確保への努力を高く評価し賛成するものです。

一方で、新年度予算案は、市民の立場から問題点を指摘せざるを得ない事業もあります。

 

まず1つは、国がらみの施策から市民をいかに守るのかという問題です。

今、日本経済は、昨年10月の消費税増税による打撃、新型コロナウイルス感染症による打撃が加わって深刻な大不況に陥りつつあります。

増税対策として実施された食料品などの軽減税率やポイント還元など政府は様々な対策を講じました。「プレミアム商品券」は本市では、対象者の1/3程度の活用にとどまっています。ポイント還元の参加店は全国で3割、残り7割の店は消費税増税で売り上げが減ったうえに、ポイント還元の参加店に客を奪われるという二重の打撃となって、市内の商店・事業所からも悲鳴が上がっています。

市民のくらしを圧迫するとともに自治体にも大きな影響があります。増税により、地方消費税交付金は、前年度比2億4900万円増の14億3500万円となりましたが、消費税増税に伴い実施した幼保無償化による新年度の市負担は1億700万円であり、市の事業への課税対象費4億6000万円、社会保障施策に投入する消費税引き上げ分は7億8800万円でいっきに吹き飛んでしまう内容です。また、国が消費税引き上げ分は社会保障経費に投入するとしていますが、一層充実するものではなく財源の置き換えにすぎません。

低迷する消費動向など景気悪化が鮮明になる中で、消費税率の引き下げを国に求めることが必要です。

 

消費税増税とともに、市民へのいっそうの不安をもたらすマイナンバ―カードの普及への予算化がすすめられています。カードの交付を要件にマイナポイント事業を9月から導入するというものです。情報の漏えいや紛失・盗難への不安がある中で、本市の発行率は16・6%に留まっています。市民は必要性を感じていないということをこの数字が示しています。

国は、2021年からマイナンバーカードを健康保険証としても使用可能にすることや、戸籍事務とマイナンバー制度を結びつける戸籍法改正、オンライン化を原則とする「デジタル手続法」の成立など、普及と整備を手当たり次第すすめています。

他人に知られたくない個人情報を、国が管理するのは基本的人権に反するものであり、あらゆる個人情報を、国が一元管理することの危険性とともに、情報流出をふせぐ保障はまったくありません。こうした問題への不安に答えることなく、マナンバ―カードの利用拡大の押し付けは市民の理解は得られません。マイナンバ―制度は今からでも中止を国に求めるべきです。

 

また、新年度から会計年度任用制度が導入されます。この制度は臨時職員の身分保障がされるという改善点がありますが、公務員労働者の働き方を大きく変えるものとなります。

地方自治体は「住民の福祉と暮らしの増進に寄与する」ものであり、恒常的かつ専門性が求められ、「公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心とする」という大原則があります。

しかし、総務省の「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」の報告では、常勤と非常勤の概念について、常勤職は「本格的業務」であり「典型的には、組織の管理・運営自体に関する業務や、財産の差押え、許認可といった権力的業務などが想定される」としています。このことは、正規職員の定員削減、非常勤職員を増やし安上がりの行政をすすめることが可能となり、継続性・専門性・地域性が求められる自治体職員の働き方を大きく変えるものです。

新年度、本市の会計年度職員の雇用予定は、フルタイム職員58名、パート職員241名、再任用職員33名、正規職員名546名で総数878名となり、このうち臨時職員は37.8%を占め、今まで以上に非正規雇用に大きく依存することになります。住民の福祉と暮らしの増進に責任を持つ自治体は、正規職員枠を大幅に広げ、市民サービスの低下につながる非正規雇用を是正すべきです。

 

大きな2つ目の問題として、昨年の台風15号・19号、21号の大雨による大きな被害を受けた本市では、多くの教訓を得ました。この教訓を活かした安心のまちづくりをいかにすすめるかが問われています。

まちづくりの1点目に、手作りの事業計画策定についてです。新年度は事業計画等の策定委託費 7件で5600万円が計上されています。中でも国土強靭化地域計画策定業務については、国が策定のガイドラインを示しており、多くの自治体が職員の手によって作成をしています。

八街市でも職員が計画・策定の力量を発揮し、まちづくりへの意欲を共有することが必要ではないでしょうか。

しかし、臨時職員の増員ではこうした取り組みも進みません。正規職員の増員とともに、職員研修費を増額し、「知識や技能の付与」から「政策の作成力を身に着ける」人材育成に力を入れるべきです。実態を知り尽くした職員によりそれぞれの事業計画を市民目線でつくりあげていくことを求めます。

2点目には、災害時の確実な伝達方法の確立や高齢者・障害者の避難所の確保とともに、住民の知恵と力で地域防災計画の見直しをすすめ、それぞれの地域にあった防災対策の強化が必要です。あわせて、市民の避難所の整備や・住民防災組織運営費のいっそうの確保が求められていますが、新年度予算では削減されており、災害対策に逆行するものとなっており、予算確保をすべきです。

 まちづくりの3点目には、八街市の経済を支える農業・商工業をいかに発展させるかの問題です。農業・商工予算は全体の1.9%にとどまり、昨年の台風で甚大な被害を受けているのにもかかわらず、振興費は今年度より削減されています。復興への本格化に向け市独自の支援策のいっそうの充実、気候変動とその影響を軽減するための緊急対策を講じることが必要です。

 

 大きな3つ目には、高齢者施策の問題です。

本市の高齢化率は約30%。今後、一層の高齢者施策の充実が求められています。

しかし、高齢者のサービスに係る在宅老人援護対策費のうち、針きゅうマッサージ・緊急通報設置管理事業など約 500万円、敬老事業費は1300万円の削減となっています。敬老事業は相変わらず、会場に行ける健康な高齢者のみの事業となっており、市内に住むすべての高齢者全員を対象にしてはいません。このような不平等な敬老事業をいつまで続けるのでしょうか。市内在住のすべての高齢者をうやまい、長寿を祝う事業に見直すべきです。

 2点目に、高齢者外出支援タクシー助成制度です。新年度から、助成券を一人48枚から30枚に減らす一方で、市街医療施設への通院のみを認めるとしています。

しかし、この間、南部・北部地域に住む方の利用格差は歴然としており、年金暮らしの方々から、「利用できない」という悲鳴や、「これでは八街に住めない」という声には答えたものとなっていません。

市内、どこに住んでいても安心して暮らせることを保障するのが、自治体の仕事です。この間のバス路線の廃止や最初から地域格差が生じることがわかっていた高齢者外出支援タクシーに代わる、市民の足の確保は切実です。早期に見直し、市民の切実な願いである誰もが安い料金で、玄関先から利用できる乗合タクシーの一日も早い実現求めます。

3点目に、高齢者が多く居住する交進・朝陽・笹引き住宅では、耐用年数をはるかに超え老朽化し危険な住宅となっています。昨年の台風による大雨でも、汲み取り式のトイレが溢れ出し、床上浸水・屋根の破損など大きな被害を受け、すでに入居募集を中止し空き部屋が多くなっている交進・笹引き団地では、解体されないままとなっており、劣悪な住環境が進んでいます。計画的に低廉・低層の高齢者向け住宅の立て替えで、安心して暮らせる環境整備を進めることが必要です。

 

大きな4つ目の問題として、次代を担う子どもたちの教育についてです。

教員の休職に対し、代替えの講師が未配置のままとなっています。と同時に、本市の小学校約7割、中学校では6割の教員が1ヶ月45時間を超す残業をしています。厚生労働省が過労死ラインとしている残業時間80時間を超す教員は小学校12%、中学校29.5%も占めています。

県に対し教員の増員を求めるとともに、市独自での教員の配置努力、業務のいっそうの見直し・大幅な削減で教員の働き方の改善を進めることは喫緊の課題です。合わせて、本市の不登校対策に欠かせないスクールカウンセラー・ソーシャルワーカー等専門の相談員を増員し、教育相談体制の充実を図る事を求めます。

子どもの貧困問題では、総務省は子ども7人に1人、ひとり親家庭では2人に1人が

相対的貧困状況にあるとしていますが、本市ではその実態調査もされないままとなっており、その対策は喫緊の課題です。

貧困対策のひとつに、就学援助制度があります。その支給率についてR2年度は小学校6.43%から7.1%に、中学校は8.78%から8.8%に引き上げるとしていますが、全国平均は15%となっており、底上げの取り組みが必要です。

また、学校によっては、年度末の支払い・精算となっています。これでは就学援助制度の本来の役割は果たせません。家庭の生活実態を把握し、すばやい対応が教育委員会・学校に求められています。

また、給食費の滞納状況は依然として多く、滞納総額は6200万円となっています。貧困にあえぐ児童・生徒への支援の拡充や、給食費の滞納を放置することなく、支援対策を強化することを求めます。

 

最後に、税徴収の在り方についてです。

予算編成方針では、税負担の公平性の観点から課税客体の適格な捕捉や債権確保

に努めさらなる収納率の向上に注力するとしています。新年度は新にペイジー・クレジット収納方法を導入するために、今年度に3500万円を投入し、新年度は業務のデータの処理手数料に174万8000円の計上をしています。しかし、その収納アップ効果はわずか0.05% ですが、滞納者にたいしクレジットカードによる納付を強要することのないよう強く求めます。

この間、捜索・差押え・公売の強化がすすめられ、給与・預金が約8割を占め、暮らしを追い詰めています。捜索では差し押さえるべき財産が発見できなかった割合も8割と高くなっています。捜索に至る過程の接触・対面指導のあり方が問われます。圧倒的多数の滞納者は、日々のくらしが大変な状況です。住民と密に接する事ができる末端の自治体だからこそ、繰り返しの話し合いが必要であり、行き過ぎた捜索のあり方を改善すべきです。

また、国税徴収法は地方税法でも準用されますが、その柱の一つは「納税者の保護」です。法は差押禁止財産、超過差押えの禁止、無益な差押えの禁止、納税の猶予、換価の猶予、滞納処分の停止などの制度を設けています。納税者が保護されることをきちんとしめすことも必要です。

市税等の税収をアップさせるためには、国いいなりの差し押さえなどの収納対策の強化を進めるのではなく、住民の生活実態をよく聞き、親身に対応する相談・収納活動に転換することを求めます。

 

以上、厳しさを増す市民のくらしの実態を丁寧に把握し、「福祉の増進」という自治体の役割をはたすことを求め反対討論とします。